CMEの展望における現在と未来のトレンド

医学生涯教育 (CME: Continuing Medical Education) は医学研究と臨床診療の間に存在するギャップを埋めることができるため、医学研究と臨床診療の両方において非常に重要な役割を果たすと言われています。CME は医療従事者に、患者の治療に必要な最新医療情報を提供します。1,2  CME の実践によって医療従事者は自らの能力を高め、専門分野におけるギャップに対応し、新しい治療方法を現場に適用し、患者が受ける医療の質を高めることができます。3,4 この記事では、CME のコンテンツ開発にみられる現在のトレンドとその広範な発信、また、それをどのように効率化できるかを検討します。さらに、産業界のエキスパートによる CME への見解や将来像についても検討しています。*

CME カリキュラム開発における 医療従事者の役割

CME の効果を上げるためには、コンテンツは、治療の最新情報だけではなく、医療従事者が何を必要としているか、どう情報検索をするか、嗜好、現在の医療が抱える課題や需要をも考慮に入れてデザインされたものであるべきです。過去何年にもわたり、CME の環境はこうした必要性に対応して変容してきており4、その焦点は従来型のクラスルームの授業形態からダイナミックなCME手法へと変化しています。5 CME コンテンツの制作者である研究者とエンドユーザーである医療従事者の結びつきをより強固なものにするため、医療従事者をCME コンテンツの査読に参加させる試みが行われています。

WentzMiller Global Services, LLC.の社長であり、Alliance for Continuing Education of Healthcare Professionalsおよび Global Alliance for Medical Education の創設者でもあるルイス・ミラー氏は次のように述べています。「コンテンツ査読者には教育を受ける側、つまり読者を入れるべきです。研究者である査読者はエビデンスの正確性を評価できますが、そのエビデンスが医療に直接携わる医療従事者にとって必要性が高いかの判断は出来ないからです。」そして、医療従事者が学習内容を吸収して実際に臨床で応用するには、「混合型学習、学習者同士の相互交流、反復学習のような複数の媒体やプラットフォーム」を採用すべきです。さらに、ミラー氏は CME をパーソナライズする必要性を強調します。たとえば、コンテンツを様々な言語に翻訳したり、医療従事者の社会文化的な現実に適応させたりして、彼らの学習効果を高めるのです。2

CME 環境におけるデジタル化の影響を見過ごすことは不可能です。2 デジタル化はCME制作側が様々な形態やチャンネルを通して医療従事者に働きかけることを可能にしただけでなく、医療従事者の情報検索方法にも影響を与えました。最新の調査によると、医療従事者の70%はオンラインで情報を検索しています。6 他の調査では、医療従事者はオンライン上で、「特定のトピックの最新研究、疾病別の最新情報、特定の患者が抱える問題に関する情報」を求めています。7 CME はこうした変わりゆくトレンドや需要に対応すべく、バーチャル学習環境やオンライン学習コースのようなデジタルソリューションを提供すべきです。

CME コンテンツ制作へ患者の参加が増加

患者は医学研究や診療において重要な役割を果たしていますが、CME コンテンツ制作に参加することは稀です。8,9  医学生涯教育認定評議会(The Accreditation Council for Continuing Medical Education)は次のように述べています。「医療システムのサービスを受ける人々の利益を考慮に入れれば、CME を向上させることができます」10 これはつまり、患者を指しています。患者の役割は、医療を受ける側から積極的に医療に貢献する者へと拡大しつつあります。医学情報の確実性や関連性を彼らが向上させています。患者が関与する事例には、患者による査読11 や CME コンテンツ制作への参加があります。10,12,13 Envision Pharma Group 患者パートナーシップ部門グローバルリードのカレン・ウーリー氏は、「今後は、医療従事者と患者が真のパートナーとなり、情報を交換したり、学び合ったりすることが増えるでしょう。また、共同で意思決定を行うこともできるでしょう。」と述べています。カレンは、医学研究や診療に携わる関係者は全て、患者にとっての最良な医療に焦点を当てていると主張しています。そのため、「関係者を団結」させ、関係者全員が 「患者チーム」に参加する必要があります。患者は「病気と共に生きている専門家であり、独自の視点を持っているからです。」2

CME の未来

医療従事者や患者の参加必要性、そして現在のヘルスケアの現状を考慮しながらCME コンテンツを制作する必要性は、専門家が述べているだけでなく、理解が高まってきています。こうした理解はCME コンテンツ制作への医療従事者や患者の参加数の増加に既に現れており、医学研究とCMEコンテンツ間の関係性の強化、医療従事者、患者との関連性が向上したりしています。このトレンドは、デジタル技術の採用が医療従事者の参加をより促すという事実とともに、未来への課題を示しています。今後、医療従事者や患者の参加必要性への理解がより高まり、コンテンツ制作者、提供者、医療従事者、患者が重要な医療のアウトカムに影響を及ぼすという共通の目標を持ちながら、真のパートナーとして共に働くことのできる時代がくるでしょう。

*注記: この記事は、白書 – デジタル時代の論文出版 – 研究者のコミュニケーション、コンテンツへのアクセス、学習の未来に関する専門家の見解に基づいています。この記事で使用される引用文は同白書からの抜粋です。

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参考文献:

  1. ESC Board, 2018, The future of continuing medical education: The roles of medical professional societies and the health care industry: Position paper prepared with contributions from the European Society of Cardiology Committees for Advocacy, Education and Industry Relations, Endorsed by the Board of the European Society of Cardiology, European Heart Journal, ehy003, https://doi.org/10.1093/eurheartj/ehy003
  2. Wiley Corporate Solutions, White Papers, 2018, Scholarly publishing in the digital era, https://corporatesolutions.wiley.com/white-papers/
  3. Prime Oncology, 2017, HCP top priorities in continuing medical education, https://www.primeoncology.org/primetimes/hcp-priorities-in-cme/
  4. Combes, J.R.; Arespacochaga, E., 2014, Continuing medical education as a strategic resource, American Hospital Association’s Physician Leadership Forum, Chicago, IL. September 2014, https://sacme.org/Resources/Documents/Meetings/2014Fall/AHA%20Report_CME-Strategic-Resource.pdf
  5. Sherman, A., 2010, Continuing medical education methodology: Current trends and applications in wound care. J Diabetes Sci Technol. 4(4), 853–856, https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2909516/
  6. Healthcasts, Whitepaper, The new rules of HCP engagement: 5 strategies to consider in an evolving pharma landscape, http://media.mmm-online.com/documents/168/healthcasts_whitepaper_41894.pdf
  7. Bennett, N.L.; Casebeer, L.L.; Kristofco, R.E.; Strasser, S.M., 2004, Physicians’ Internet information-seeking behaviors. J Contin Educ Health Prof. 24(1):31–8.
  8. Facey, K.; Boivin, A.; Gracia, J.; Hansen, H.; Lo Scalzo, A.; Mossman, J.; Single, A., 2010, Patients’ perspectives in health technology assessment: A route to robust evidence and fair deliberation. Int J Technol Assess Health Care, 26(3), 334-340, doi:10.1017/S0266462310000395
  9. Dirik, A., Sandhu, S., Giacco, D., et al., 2017, Why involve families in acute mental healthcare? A collaborative conceptual review. BMJ Open, 7:e017680. doi: 10.1136/bmjopen-2017-017680
  10. Accreditation Council for Continuing Medical Education, 2017, Engaging patients in CME: a closer look at criterion 24 http://www.accme.org/education-and-support/video/tutorials/engaging-patients-cme-closer-look-criterion-24
  11. Rajagopalan, J., 2015, Patient peer reviews: An unorthodox approach to clinical trial publication, https://www.editage.com/insights/patient-peer-reviews-an-unorthodox-approach-to-clinical-trial-publication
  12. Accreditation Council for Continuing Medical Education, 2017, Engaging patients in CME, http://www.accme.org/education-and-support/video/interview/engaging-patients-cme
  13. Accreditation Council for Continuing Medical Education, 2017, 12 tips for engaging patients in CME, http://www.accme.org/sites/default/files/760_20170814_12_Tips_for_Engaging_Patients.pdf